「山地民の言語─湖南省南部の言語群」
共同研究プロジェクト「
タイ文化圏における山地民の歴史的研究」
2009412日第1回研究会

AA研棟セミナー室(301
動画   

 瑶族は16世紀以降、華南から東南アジア大陸部に遷移し始めた山地民として知られています。故地の華南における数多くある言語・方言のなかで、東南アジアで話されているのはミエン語(ユーミエン語)とムン語(藍靛瑶語)の二言語のみです。しかし、これまで華南の瑶系言語に関しては言語データが少なく、一体どのような系統の瑶語があるのか、その実態像が必ずしも明白であったとはいい難い状況でした。
 近年、日本の言語学者が中国西南部においてフィールドワークを展開し、苗系言語や瑶系言語を含む諸言語の記述を手がけるようになりました。貴州の苗語に関する成果として2008年東京外国語大学から刊行された田口善久氏の『羅泊河語詞集』が挙げられます。田口氏のホームページ(http://www.l.chiba-u.ac.jp/~taguchi/SW-scene.html)で調査地が紹介されています。また、2008年から吉川雅之氏が研究代表者を務める「湘南土語の総合的研究」という科研プロジェクトが発足し、現地でフィールドワークによる瑶系言語と壮語などに関するデータを積極的に収集しています。湖南・広東・広西が接する地域には漢族・瑶族・壮族が居住していますが、この地域で話されている「土話」と「平話」と総称される言語群のなかには系統未詳のものが多く存在します。吉川氏科研は言語研究と物質文化研究(器具と建築物)の双方から、フィールドワークで得られたデータに基づいて言語と話者の形成を明らかにしようとしています。吉川氏のホームページ(http://www.ac.cyberhome.ne.jp/~hongkong-macao/grant-in-aid1.html)でこれまでの調査が紹介されています。
 この度の研究会では、吉川氏科研の中心メンバーにこれまでの調査で収集した言語データについて発表して頂くことになりました。発表はタイ文化圏の山地民の言語研究に大いに参考になると思います。  研究代表者 唐立